2010年 04月 30日
おもだか家物語 12回目 |
「ねぇママ、土地の値段を差し引いて1800万円ぐらいの家を探そう。
それぐらいみておけば、そこそこ選べるんじゃないの。」
スミは現地から帰ってきてから、なるべくタクとの会話を避けるようにしていた。
家の話題になれば、事がどんどん進んでしまいそうで怖かったからだ。
会話を避けるため、普段はあまりしたことのない窓拭きや下駄箱の中の片付けをしていた。
子供たちも手伝ったり、二人でふざけたりしていて、さっき見てきた土地についてタクと
話している様子はなかった。
一方タクは、帰宅するなりここ1週間分の新聞広告をひっぱり出してきて
住宅メーカー数社の広告をまとめていた。
それをじっくり見ながら、パソコンでも各社のHPを見たり、忙しそうにメモを取っていた。
スミはそんなタクを見て、次にタクが切り出してくる言葉を予想し、その答えを考えていた。
そんなさなかのタクの提案が1800万円だった。
「これ見て。1ヶ月ちょっとで完成するんだって。しかも今キャンペーン中だって。
サービスが色々すごそうだぁ!」
(そこんちは一年中、キャンペーンよっ!)
なんてことを思いながらタクへの返答を考えていた。
タクはあまりにも黙りこんでいるスミに少しいら立ち、やや強引に話を進めようとした。
「ママさぁ、不動産屋のおばちゃんが言ってたじゃないか。土地探しは恋人を見つけるのと
同じようなもんだって。家だってきっとそうだよ。住んじゃえばどこで建てても変わんないよ。
部屋なんか必要な数あればいいじゃん。安いところで決めちゃおうよ。」
黙って聞いていたスミだったが、この言葉には反応してしまった。
「そうじゃないでしょ!
土地は人間みたいに、こっちの希望で色々変えられるものじゃないって意味でしょ!?
元々ある、ありのままを直感的に好むかどうかって事で言ったんでしょ。
家はこれから造るんだから違うに決まってるでしょ!バカじゃないのっ。
もっと落ち着いて考えてよっ。
すぐ欲しい、欲しいで、それじゃまるで子供よっ!」
常に冷静を心掛けてきたスミだったが、タクの言葉についカッとなってしまった。
子供たちがスミの大きな声に、ただ事じゃないと気付いて近くに寄ってきた。
「パパ...、ママを怒らせたの?」セツが心配そうに小いさい声でタクに聞いた。
タクも久しぶりのスミの大きな声に驚いて、呆然としながらセツに「うん。」と答えた。
「じゃあ、あやまったほうがいいよ。」とセツが言うので、再びセツに「うん。ごめん」と言った。
「とおちゃん、ママにだよぉ。」とケンが言うと
「ああそうか、
ママ、ごめん。」と促されるままタクが言った。
スミも小さくうなずいてタクと子供たちに「ごめんね。」と言った。
タクも落ち着いて、自分の悪い癖がうずきはじめた事にはっきりと気付いた。
気付くのと同時に、今回ばかりは自制しなければ、家庭の危機になりかねないと思った。
それを思えば、もっと冷静にゆっくり考えられそうだとマイナスのイメージを持ちつつ
自分を抑制して行こうと決めた。
「ごめん、ママ。他に問題がなければ出来るだけ早く欲しいと思っちゃった。」
「そりゃ私だって早く欲しいけど、
今回はこういうことにならないように順々に話をして来たはずだったじゃない。
パパの性格は分かってるけど、あまりにも急すぎるから..。」
「うん。もう言わないよ、ごめんね。」
タクはこれからのスケジュールはスミに任せることにして、スミの希望する家作りのペースに
合いそうな建築屋を数社ピックアップすることにした。
スミも家の間取に対する希望を確認して自分なりにまとめる事から始めようと思った。
翌日、タクは夕焼け銀行の担当者に今回の計画を説明し、
どの程度借入が出来るのかきいてみた。
それによって建物にかける金額を決めようと思っていた。
しかし、借入の審査には土地のほかに建物の金額も必要らしい。
当たり前と言えば当たり前のことか、となんとなく納得した。
要するに、まずは希望の住宅の絵を作って、その建物がいくらで出来るのかが
分からなければ、銀行も審査を始められないということのようだ。
だとすれば、スミと間取の話を早急に進めつつ、
見積が素早く出せる建築屋を探さなければならないと思った。
いずれにしろ、いそがなければ。
タクはまた勝手にいそぎ始めた。
つづく
それぐらいみておけば、そこそこ選べるんじゃないの。」
スミは現地から帰ってきてから、なるべくタクとの会話を避けるようにしていた。
家の話題になれば、事がどんどん進んでしまいそうで怖かったからだ。
会話を避けるため、普段はあまりしたことのない窓拭きや下駄箱の中の片付けをしていた。
子供たちも手伝ったり、二人でふざけたりしていて、さっき見てきた土地についてタクと
話している様子はなかった。
一方タクは、帰宅するなりここ1週間分の新聞広告をひっぱり出してきて
住宅メーカー数社の広告をまとめていた。
それをじっくり見ながら、パソコンでも各社のHPを見たり、忙しそうにメモを取っていた。
スミはそんなタクを見て、次にタクが切り出してくる言葉を予想し、その答えを考えていた。
そんなさなかのタクの提案が1800万円だった。
「これ見て。1ヶ月ちょっとで完成するんだって。しかも今キャンペーン中だって。
サービスが色々すごそうだぁ!」
(そこんちは一年中、キャンペーンよっ!)
なんてことを思いながらタクへの返答を考えていた。
タクはあまりにも黙りこんでいるスミに少しいら立ち、やや強引に話を進めようとした。
「ママさぁ、不動産屋のおばちゃんが言ってたじゃないか。土地探しは恋人を見つけるのと
同じようなもんだって。家だってきっとそうだよ。住んじゃえばどこで建てても変わんないよ。
部屋なんか必要な数あればいいじゃん。安いところで決めちゃおうよ。」
黙って聞いていたスミだったが、この言葉には反応してしまった。
「そうじゃないでしょ!
土地は人間みたいに、こっちの希望で色々変えられるものじゃないって意味でしょ!?
元々ある、ありのままを直感的に好むかどうかって事で言ったんでしょ。
家はこれから造るんだから違うに決まってるでしょ!バカじゃないのっ。
もっと落ち着いて考えてよっ。
すぐ欲しい、欲しいで、それじゃまるで子供よっ!」
常に冷静を心掛けてきたスミだったが、タクの言葉についカッとなってしまった。
子供たちがスミの大きな声に、ただ事じゃないと気付いて近くに寄ってきた。
「パパ...、ママを怒らせたの?」セツが心配そうに小いさい声でタクに聞いた。
タクも久しぶりのスミの大きな声に驚いて、呆然としながらセツに「うん。」と答えた。
「じゃあ、あやまったほうがいいよ。」とセツが言うので、再びセツに「うん。ごめん」と言った。
「とおちゃん、ママにだよぉ。」とケンが言うと
「ああそうか、
ママ、ごめん。」と促されるままタクが言った。
スミも小さくうなずいてタクと子供たちに「ごめんね。」と言った。
タクも落ち着いて、自分の悪い癖がうずきはじめた事にはっきりと気付いた。
気付くのと同時に、今回ばかりは自制しなければ、家庭の危機になりかねないと思った。
それを思えば、もっと冷静にゆっくり考えられそうだとマイナスのイメージを持ちつつ
自分を抑制して行こうと決めた。
「ごめん、ママ。他に問題がなければ出来るだけ早く欲しいと思っちゃった。」
「そりゃ私だって早く欲しいけど、
今回はこういうことにならないように順々に話をして来たはずだったじゃない。
パパの性格は分かってるけど、あまりにも急すぎるから..。」
「うん。もう言わないよ、ごめんね。」
タクはこれからのスケジュールはスミに任せることにして、スミの希望する家作りのペースに
合いそうな建築屋を数社ピックアップすることにした。
スミも家の間取に対する希望を確認して自分なりにまとめる事から始めようと思った。
翌日、タクは夕焼け銀行の担当者に今回の計画を説明し、
どの程度借入が出来るのかきいてみた。
それによって建物にかける金額を決めようと思っていた。
しかし、借入の審査には土地のほかに建物の金額も必要らしい。
当たり前と言えば当たり前のことか、となんとなく納得した。
要するに、まずは希望の住宅の絵を作って、その建物がいくらで出来るのかが
分からなければ、銀行も審査を始められないということのようだ。
だとすれば、スミと間取の話を早急に進めつつ、
見積が素早く出せる建築屋を探さなければならないと思った。
いずれにしろ、いそがなければ。
タクはまた勝手にいそぎ始めた。
つづく
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by omodakablog
| 2010-04-30 17:06
| おもだか家 物語