2010年 04月 23日
おもだか家物語 11回目 |
第二部:急転。
現地へ着いたのは昼過ぎだった。
二人の話し合いで土地はほぼ確定した。
太陽の光が予定地全体にふり注ぎ、日当たりの良さを感じさせる。
環境・日当たりの面では何の心配もなさそうだ。
はじめて家族4人でここへやってきた。
ケンとセツはさっそく、敷地の中へ自分の部屋割りなどをして遊んでいる。
スミもタクもそんな子供達を見ながら、ここへ家を建てるという実感がより強く沸いてきた。
しかしながら...。
そんな実感と共に、タクにとって恐れていたもう1つの感情が。
唯一と言っていいかもしれないタクの悪い癖。
欲しいと思ったら、たった今、すぐに手に入れたくなってしまう。
ほぼ直感で購入して、その気持ちを満足させる。
タク自身、その悪い癖を十分理解していて、その都度、自分の気持ちを抑えようとはする。
しかし、その欲を抑えることで、感情は時に衝動的になり精神状態を不安定にさせる。
それによって、周りの人へ迷惑を掛けることもあった。
スミは何度かその状況を目で見て認識している。
今回の住宅計画で、スミの中で大きな不安の1つだった。
でも、ここ最近は、子育てに追われ、自分のことよりも子供優先できたため、
そんな癖は過去のものと思えるようになっていた。
また、今回に限っては計画自体がそうたやすく決められるものではないので、タクの気持ちを
気付かれないように、巧みにコントロールしながら話を進めてきたつもりでもいた。
それが功を奏し、土地に関してはゆっくり時間をかけて理想の物件を手に入れられそうだ。
しかしながら、タクにとってはその土地が引き金となってしまった。
土地の決定までは、自分の感情を表に出さずに済んでいたのかも知れない。
しかし、その決定した土地での子供達を目の当たりにし、それを早くカタチある状態で
実現したい、そんな気持ちが瞬間的に心の全てを占領してしまった。
「なぁ、決まってる間取ならすぐに家が建つ建築屋もあるよね?」
タクはボソッと言った。
スミ「えっ!?...」
「今になって何を言ってるの?せっかくここまでゆっくり時間かけてきたんだから、
あともう少し、じっくり考えながら進めようよ。」
スミは落ち着いて諭すようにゆっくり言った。
「う~ん。土地買うのも、お金借りるのも全部早いほうが何かと得な部分が多そうだよ。
借りるところも夕焼け銀行でいいと思うし、そんなに比較しても変わらないし。」
「明日銀行の担当に相談して借りられる金額から家の値段を決めちゃおう。」
「その値段で買える家を広告から探せばいいさ。」
タクは欲しいものが出来たときの口上はいつもだいたい同じだった。
今までと全く違うことを言い出したときがそのサインだとスミは分かっていた。
うわっ、やっぱり出たか..。
スミは抱いていた不安が土地ではなく、建物で的中してしまったことを悟った。
こうなると、面倒くさがりで、なおかつ事を進めだすと早いタクの行動力は恐ろしい。
じっくり間取を考えたかったスミも先手、先手で計画を考え直さなければならない。
タクにはっきりその症状が出たわけではないが、スミは少しずつあせり始めている自分に
気付いた。
そして、
今まで同じ方向だった二人の合さったベクトルが、土地の決定を機に
異なる方向に分散してしまったような気がして、スミはとても悲しくなった。
つづく
現地へ着いたのは昼過ぎだった。
二人の話し合いで土地はほぼ確定した。
太陽の光が予定地全体にふり注ぎ、日当たりの良さを感じさせる。
環境・日当たりの面では何の心配もなさそうだ。
はじめて家族4人でここへやってきた。
ケンとセツはさっそく、敷地の中へ自分の部屋割りなどをして遊んでいる。
スミもタクもそんな子供達を見ながら、ここへ家を建てるという実感がより強く沸いてきた。
しかしながら...。
そんな実感と共に、タクにとって恐れていたもう1つの感情が。
唯一と言っていいかもしれないタクの悪い癖。
欲しいと思ったら、たった今、すぐに手に入れたくなってしまう。
ほぼ直感で購入して、その気持ちを満足させる。
タク自身、その悪い癖を十分理解していて、その都度、自分の気持ちを抑えようとはする。
しかし、その欲を抑えることで、感情は時に衝動的になり精神状態を不安定にさせる。
それによって、周りの人へ迷惑を掛けることもあった。
スミは何度かその状況を目で見て認識している。
今回の住宅計画で、スミの中で大きな不安の1つだった。
でも、ここ最近は、子育てに追われ、自分のことよりも子供優先できたため、
そんな癖は過去のものと思えるようになっていた。
また、今回に限っては計画自体がそうたやすく決められるものではないので、タクの気持ちを
気付かれないように、巧みにコントロールしながら話を進めてきたつもりでもいた。
それが功を奏し、土地に関してはゆっくり時間をかけて理想の物件を手に入れられそうだ。
しかしながら、タクにとってはその土地が引き金となってしまった。
土地の決定までは、自分の感情を表に出さずに済んでいたのかも知れない。
しかし、その決定した土地での子供達を目の当たりにし、それを早くカタチある状態で
実現したい、そんな気持ちが瞬間的に心の全てを占領してしまった。
「なぁ、決まってる間取ならすぐに家が建つ建築屋もあるよね?」
タクはボソッと言った。
スミ「えっ!?...」
「今になって何を言ってるの?せっかくここまでゆっくり時間かけてきたんだから、
あともう少し、じっくり考えながら進めようよ。」
スミは落ち着いて諭すようにゆっくり言った。
「う~ん。土地買うのも、お金借りるのも全部早いほうが何かと得な部分が多そうだよ。
借りるところも夕焼け銀行でいいと思うし、そんなに比較しても変わらないし。」
「明日銀行の担当に相談して借りられる金額から家の値段を決めちゃおう。」
「その値段で買える家を広告から探せばいいさ。」
タクは欲しいものが出来たときの口上はいつもだいたい同じだった。
今までと全く違うことを言い出したときがそのサインだとスミは分かっていた。
うわっ、やっぱり出たか..。
スミは抱いていた不安が土地ではなく、建物で的中してしまったことを悟った。
こうなると、面倒くさがりで、なおかつ事を進めだすと早いタクの行動力は恐ろしい。
じっくり間取を考えたかったスミも先手、先手で計画を考え直さなければならない。
タクにはっきりその症状が出たわけではないが、スミは少しずつあせり始めている自分に
気付いた。
そして、
今まで同じ方向だった二人の合さったベクトルが、土地の決定を機に
異なる方向に分散してしまったような気がして、スミはとても悲しくなった。
つづく
by omodakablog
| 2010-04-23 15:13
| おもだか家 物語